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No.10

 この世の中、私たちの身近には、気づかないだけで、美しいものがあふれている。感性を研ぎ澄ましてみると、見えてくる美しさがある。その1つが薔薇だ。バラは本当にこれが自然にできたものなのかと思えるほど、端正で、絵も言われぬ美しさを兼ね備えている。

このバラの名は、ガブリエル。天使の名前が付いたバラだ。日本で作られたこのバラは、京成バラ園が販売しているバラだ。日本らしい繊細な色合い。ただの白ではない微妙なホワイトとグレーッシュなホワイトの色合いはみているものを魅了してやまない。

バラは遠くでみるのと、近くで見るのでは全く違う顔を見せてくれる。マクロレンズで撮影されたこのバラ。一輪のもつ美しさは筆舌に尽くしがたいものがある。バラの芯は淡いペールピンク、外側はオフホワイト、ペールピンクからオフホワイトへ緩やかに変化していくグラデーションの美しさはまさに芸術と言えるだろう。

人物の写真で、クールに撮影する場合、陰影をうまく表現し、その人物の内面の強さや意思の強さを表現することがある。このバラの写真もそれに似ている。バラの芯の濃いパープルピンクと、外側のホワイトの花びらの陰影。たかが一輪。されど一輪。そう思わせる存在感の大きさが感じられる一枚だ。

バラの葉は、濃いグリーンから、薄いグリーンまで様々だ。このバラは濃いグリーンの葉を持つばら、その名前はスイートアフトン。名前の由来はスコットランドの大地をゆったりと流れるアフトン川のように、 ふわっとゆったりとしたイメージから名付けられたバラである。ふわっとした柔らかな雰囲気の中に懐の大きさを感じるバラである。濃い緑の葉の中にふわっとしたバラの花が見え隠れする姿は和達たちを強く魅了する。

夕暮れの時間が過ぎ去り、ブルーモーメントと呼ばれる世界がブルーに包み込まれる瞬間がほんの数十分間だけある。その中に佇むバラの花は、アンニュイで、不思議さの漂う1つの世界を作り上げる。まるで架空の物語の主人公が旅に出る前の静かに思いにふける佇まいが感じられる一枚となった。

バラの花びらは、人がそれぞれ性格が違うように、バラも花それぞれで形も色合いも、咲き方も全然違う。だから一輪一輪、私は大切に写真に残したいと思う。だって一生懸命命の限り、花を咲かせるバラの姿に共感を覚えるからだ。その命の一輪一輪をこうして記録に残すことで、生命の灯火を精一杯輝かせるバラへの敬意を払いたい。このバラはアンブリッジローズという私が一番好きなバラだ。

バラの花びらをこうしてマクロレンズで切り取ると、不思議な世界が表現される。淡いイエローから、濃いピンクへ変化していく空間がそこには存在する。人工物でここまで美しい色合いのグラデーションは存在するだろうか。

スイートアフトンのバラだ。スコットランドのアフトン川のように雄大な流れからなずけられたバラだ。ふんわりとした柔らかなの中に凛とした強さを感じませんか。バラの強い意思を感じ取ることができる一枚。その花が散るまで命の灯火を最後まで燃やし続ける強い意思がそこにはあります。そして数日のうちにその花びらはあまりに潔く散っていくのです。

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